たったの一晩で、20万もらえる。
それは、普通のバイトで稼げる額の、何倍のも金額だ。
いかがわしいものであることは確実だが、お金に困っている大学生にとって、短い期間で高額の報酬を得られるバイトというのは魅力的だ。
(これなら、勉強の時間もちゃんと維持できる……。たった一晩。怖いけど……命の危険はないって書いてあるし……。多少のことは我慢しよう)
満里奈は、意を決してそこに記載されていた電話番号に電話をした。
するとすぐに男がでて「可能ならば今晩、仕事をして欲しい」と言った。
満里奈は、時間を置くと決意が揺らぎそうだと思ったので、男のその申し出をありがたく受け入れた。
そして、指定された時間に、指定された場所に向かう。
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そこは、マンションの一室だった。
満里奈がすんでいる学生向けのアパートではなく、芸能人が住んでいそうな高級そうなマンションだ。
指定された部屋番号を入力すると、電話と同じ男の声がインターホン越しに聞こえる。
そして満里奈は、豪華なエントランスを通り抜け、エレベーターにのった。24階の9号室が、指定された部屋だ。
チャイムを押すと、サングラスをかけた、いかにも『業界風』の男が、満里奈を出迎える。
家具の少ない、応接室のような部屋に通されると、男は『海堂』と名乗った。
そして海堂は、満里奈の顔と体を値踏みするかのようにじっくりと見ると、言った。
「合格だ。君なら、報酬以上の仕事をしてくれるだろう。一応確認するけど……それなりの覚悟はできてるんだね?」
その言葉に、満里奈は頷く。
「じゃあ、まずはこれにサインして」
それは『契約書』と書かれた用紙だった。そこには文章は何もなく、ただ名前と、印鑑を押す欄だけがある。
「拇印でもいいから、さっさと書いちゃって」
満里奈が用紙にサインしたのを見ると、男はなぜかビデオカメラをまわしながら、満里奈に質問を始めた。その内容は「名前は?」「年齢は?」「好きな食べ物は?」と言う他愛無い質問から、「初体験はいつか」「好きな体位はなにか」などの過激なものまで、様々だった。
性的な質問に答えられない満里奈に、海堂が不満気な表情を見せたので、満里奈は恥じらいながらも自分が処女であることを伝える。すると、高堂は意味深な笑みを浮かべた。
「今時珍しいね」
そう言いながら、いやらしく笑う。
そして、海堂は続けた。
「満里奈は、処女なのに、こんなバイトに応募してきたんだ?」
「こ、こんなバイトって……?」
「分かってるだろ。一晩で20万も稼げるんだ。多少はエッチな内容だよ」
予想はしていたが、改めて突きつけられた現実に、満里奈は喉を鳴らした。しかし、覚悟は出来ていたはずだ。ここで引き返す訳にもいかない。
黙りこくった満里奈に業を煮やしたのか、すると、海堂はビデオカメラを机に置くと、言った。